「没後60年 中城ふみ子と中井英夫」展@小樽文学館

小樽文学館で「没後60年 中城ふみ子中井英夫展」が9月7日まで開催しています。

(小樽文学館 「中城ふみ子中井英夫展」) http://otarubungakusha.com/exhibition/2014051421

今冬の中井英夫展に引き続き、嬉しい企画です。
若き日に短歌雑誌の編集者として多くの新人を見いだした中井英夫ですが、今回の展覧会では、「短歌研究」第1回五十首詠の入選者として世に送りだした中城ふみ子との展示です(中城ふみ子がメインですが、中城が短命のため分量的には半々になる)。

展示内容ですが、中城ふみ子中井英夫の往復書簡が圧巻。
往復書簡の内容は東京創元社の創元ライブラリ版の中井英夫全集の『黒衣の短歌史』に収録されていますが、今回は、全集には未収録の中井英夫宛て中城ふみ子のハガキ(昭和29年6月20日)が展示されています。
最近、古書店に出ていたものを中城ふみ子の出身地の帯広市図書館が購入したもので、中井が中城の名字の読み方を訊ねたことに対して中城が「『なかじょう ふみ子』です。」と答えています。
また、中井は手紙に絵をちまっと書き込んでいて、実物を読むのが楽しいです。
中城ふみ子の展示はノート稿、原稿、ゲラ刷り等の他幼少期から晩年までの写真が展示。
中井英夫の展示は、短歌編集者の側面を中心に構成され、前回の中井英夫展で展示されたものもありますが(寺山修司のハガキは何度みても見応えがある)、前回なかったものもあり、中でも中井宛て若月彰(中城の評伝『乳房よ永遠なれ』を執筆した時事新報の記者)からの昭和29年7月27日付け至急電報(ウナ電)が印象深かったです。
ウナ電の実物を見るのは初めてで、本当に「ウナ」と打ってあるのですね。
「フミコキトクスクユケ」
電報だからたったこれだけの文字です。
この後、中井英夫は7月29日に札幌医大病院に中城を見舞い、8月1日に列車で帰路につき2日に帰京、8月3日に中城は亡くなります。中井と中城の言葉を尽くした書簡のやりとりの合間に、短いカタカナが時間を断ち切るかのように入り込んだような気がしました。

今回、探偵小説研究会の「CRITICA」8号 特集 中井英夫没後20年 (1部千円)を小樽文学館で委託販売していただいています。
小樽観光の折りにはお手に取っていただけたら幸いです。
(「CRITICA」8号内容) http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/critica_08.html