『文學少女の友』。

ユリイカ2006年2月号 特集=ニート 新しい文学はここから始まる

ユリイカ2006年2月号 特集=ニート 新しい文学はここから始まる

ユリイカニート特集に書いた「生活? そんなものはF1層に任せておけ。」(『文學少女の友』収録予定)より。

川崎長太郎の〕『無題』の北川は本を読みすぎたせいなのか、〈女は女自分は自分という行き詰りを感じ〉〈異性に対しても中途半端な情熱しか持てなかった〉 。女弟子をエロい目で見て勝手に煩悶する田山花袋、姪を妊娠させといてパリまで逃げた島崎藤村、DVの果に妻を捨てて樺太に出奔した岩野泡鳴、逃げた女房にストーカー行為を働く近松秋江、作家志望の若い女にいい年して振回される徳田秋声、若くして女中に手を出して父と大喧嘩し、名を成してからは待合の仲居に懸想して細君と揉めた志賀直哉、ひとりの女との出会いと別れ・再会から結婚・死別までを切々と書き綴った瀧井孝作、妻が処女じゃなかったことをぐちぐち悩み倒す嘉村磯多といった錚々たる先輩・後輩(このなかには川崎のデビュー以後のできごともありますが)に囲まれてると、俺そこまでやれねーよ、と思うのもしょうがない。

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