個人的なことは生理的なことである。

Personal is physiological*1.

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります

先月著者から献本いただいた『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』。彼女にせよ、車谷長吉町田康ひさうちみちおにせよ、関西の言葉の影響を地の文に反映した文章がしばしば「口語的」とか「口誦的」と形容されますが、これらは必ずしも口語的なものではないと思います。みうらじゅんの書名じゃないけど〈関西文〉というものがあるのかもしれないと、関西出身でない俺には思えます。
漂流物 (新潮文庫)

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夫婦茶碗 (新潮文庫)

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東京の関西文 (ヤングアダルトブックス)

東京の関西文 (ヤングアダルトブックス)

『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』は、ぱっと見お行儀のよくない日本語で書かれているのですが、《ユリイカ》や《早稲田文学》に彼女が発表した、敢えて言うならふっと多和田葉子作品を思わせもする高密度の散文ともちゃんと地続きで、とても怜悧に練られています。はじめのほうにあるシルバニアファミリーの話とか、かなりの破壊力です。
乱視読者・若島正氏が今年の3冊にこれと、あと下の2冊を挙げているとのこと。未読のかたは騙されたと思ってhttp://www.mieko.jp/へどうぞ。【id:chinobox
私のハードボイルド―固茹で玉子の戦後史

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ゆめまぼろし百番

ゆめまぼろし百番

*1:physiologicalは字義どおり「生理(学)」的という意味であり、日本語で言う「理屈ではなく本能的・感覚的に感じられるさま」(この「本能」もたいがい比喩だが)という二義的でありながら日常的な意味合いはないみたい。よってこの英文は通じません。たんに、もとの文と同じく頭韻ですよと。