僕たちのパラドクス

第6回富士見ヤングミステリー大賞受賞作。
現代に生きる男子高校生、高崎青葉の前に、23世紀の未来からやって来た一人の美少女が現れる。彼女はタイムトラベルを悪用した犯罪者を裁く時空監査員であった。時空を超えたボーイ・ミーツ・ガール譚に、タイムパラドックスの原因解明を絡めたあたり、そこはかとなくクラシックなムードが漂っている。もっとも、タイムパトロールの少女が、犯罪者は容赦なく斬殺……というあたり、今様な感じもするのだが。
そうそう、クラシックといえば、次のくだりには思わず脱力した。

「二二七九年にも、ミステリーってあるの?」
「そりゃ当然。どこぞの宗教みたいに、新古典派と古典原理主義派との対立は激化する一方ね。こないだなんて叙述技法が中央協会に異端認定されて、それに後押しされた過激派が叙述技法第一人者の自宅にテロを仕掛け、死者まで出る騒ぎになったのよ。もう一人称視点で話を書いただけで異端審問にかけられる物騒な世の中に――って、そんな話どうでもいいでしょ」
 ハルナはブンブンと首を振る。どんな事になってんだ、二十三世紀のミステリー業界……

いったい全体、どんな未来世紀だ、おい!