本秀康『アーノルド』

河出文庫の新刊『アーノルド』は、『怪盗グリフィン、絶体絶命』に素敵な挿画を描いてくださった本秀康氏の自選漫画「ベスト本」。レトロでほのぼのしたタッチの絵柄と、ビター&ブラックなストーリーのギャップから、「異色作家短篇」風のテイストがにじみ出て、同じ河出書房新社奇想コレクション〉の番外編といってもいいようなアンソロジーになっている。

巻頭の表題作と、最後に置かれた「ボクとハカセ」は、いずれもロボット/人工知能テーマを扱ったSFの秀作。アイロニカルなツイストが効いているので、ミステリファンが読んでも愉しめるはず。

収録作品のひとつ「君の友だち 金星編」について、斎藤環氏は《「セカイ系以前」に発表されながらも》《乖離した二つの世界を一つの物語として融合し得たという点では、ひとつのエポックとも呼びうるような傑作である》と高く評価している(「戦争とニート あるいは、なぜ『戦争』は『成長』を描き得ないのか2」/『小説トリッパー』2005年冬号に掲載)。ただし斎藤氏が主に紹介しているのは、別バージョンの「木星編」の方ですが、「ストーリーの骨子はほぼ同じ」なので。

アーノルド (河出文庫 も 6-1)

アーノルド (河出文庫 も 6-1)