コーダル・モーダル/モーダル・コーダル

吉野仁氏が4月16日付の「孤低のつぶやき」で、「モーダルな事象(やはり長い)」というテキストを書いているのを興味深く読んだ。吉野氏は、菊地成孔大谷能生『憂鬱と官能を教えてくれた学校』の内容を簡単に紹介しながら、「あっ、これはまさしく『モーダルな事象』だな。もしかすると、あの作品で作者の奥泉光氏がやろうとしたことをいまになって理解したのかもしれない」という。

実は以前、私も吉野氏と同じようなことを思いついて、「群像」2005年10月号の座談会「小説内リアリズムと読みの多義性」(奥泉光北村薫法月綸太郎)で、作者本人に直接たずねてみたことがある。

法月 『モーダルな事象』というタイトルなんですが、ジャズのモードから来ているんですか。僕はジャズというのは全然わかんなくて、菊地成孔さんの『憂鬱と官能を教えた学校』という本からの受け売りなんですけれども。要はビバップという時代があって、コード進行というものが自動的に曲というか、演奏をつくっていた。それは一種、順列組み合わせのゲームみたいなもので、十年ぐらい盛り上がるんだけれども、だんだんそういうやり方に飽きてきて、そこでモード奏法というものが出てきましたということが書いてあったんですけど、奥泉さんからすると、今までのメタフィクションはコード進行でどんどん転調していって、ぐるっと戻ってきて終わるみたいな書き方のもので、今回のモーダルというのは、その先にあるものということなんでしょうか。
奥泉 今いわれてそうだと思いました。タイトルを選ぶ直観というのは、なかなか説明しがたいものがあるんですけれども、今お話を聞いて、なるほど、と思いました。

本当に面白いのは、この前後の奥泉氏の発言なのだけれど、引用すると長文になるので割愛。関心を持たれた方は、「群像」のバックナンバーを探して読んでください。

憂鬱と官能を教えた学校

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モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

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