勝手にミステリツアー

5月31日に引き続き、ニュージーランドの話題。ミステリにおいて、さまざまなトリックが使われるけれど、そのトリックによる錯誤は、実際にはどのくらい通用するものだろうか、とニュージーランドからの帰りにちょっと考えるようなことがあった。
帰国の飛行機は、クライストチャーチから成田への直行便はなく、クライストチャーチからオークランドへ国内線で乗り継ぎ、オークランドから成田への国際線に乗ることとなっていた。
クライストチャーチから乗った飛行機は朝早かったため、乗ったと同時に眠りにつき、気がつくともうすぐ着陸という状況だった。着いたらさっさと出国手続きをして免税品の受け取りをして、とだんどりを反芻していると、これからバスが来るから自分で受託荷物を持って移動をしてほしいと機内放送が入った。同行者が言うには、飛行機はしばらく飛行場の上空を旋回していたらしい。なるほど便利のいいターミナルが混んでいて遠いターミナルに着陸することになったのだろう、と推測をして、飛行機を降りてコンテナに積まれた荷物が車で運ばれてくるのを待ち、バスに乗り込んで出発したのだが、それにしてもターミナル間の移動にしてはバスが止まる気配がない。長くても20分くらいだと思っていたので、えらく離れているなあ、もしかしてヒースローとガトウィックくらいに離れているのかしらん、シャルル・ド・ゴールとオルリー*1くらいかしらん、と思っていると、ロトルア方面行きの道路標識の表示が見えて、これはさすがにおかしい、と気がついた。ロトルアというのはオークランドから230kmは離れている温泉地なのである。*2
どうも、オークランドからはえらく遠い空港に下りたらしい。バスに乗って2時間後にようやく目的のオークランド空港に到着して分かった事の次第は、飛行機はオークランド空港の濃霧で着陸できず、最寄りの(それでも130km離れている)ハミルトン空港に着陸したということだった。飛行機の離陸は濃霧でもできるらしく、成田行きの飛行機は30分遅れで(国際線ではほぼ定刻といえよう)で立ってしまったとのこと。そういえば、バスから見たオークランド空港の上空は魔女が仕組んだかのような重そうな霧が横たわっていたなあ、と思い出すのだった。というわけで、その日の日本行きの飛行機はもうないので、翌日のしかもシドニー乗り継ぎなどという一手間かけた飛行機で帰国することとなったのだが――。
さて、私はずっとオークランドにいると思っていて、実は離れたハミルトンにいたということに気がついていなかったわけだが、これって、Aという地点にいると思っていたら実は遠くのB地点にいた、というトリックと似ているなあ、と思った次第。逆に遠くに離れたBにいると思っていたら、Aのすぐそばにいた、というのもこれの変形で成立するだろう。今回は、昼間で外の道路標示が見えたから途中で錯誤に気がついたが、これが夜だったら道路標示は見えず錯誤したままかもしれない。寝ていたために濃霧で目的の飛行場に着陸できなかった経緯に気がついていない、英語のアナウンスを正確に聞き取れない、その後もきちんとした情報が得られない、という状況が重なってのことだったが、ミステリのトリック風の錯誤は案外簡単に生じるものだと思った。
ところで、飛行機で日本では未公開の洋画を見たが、これが○○トリックだということが最後に分かって、そうかミステリ的仕掛けがあったのか、と見て得した気分になった。たぶん監督名と映画タイトルを書くと、映画を見た時点で私がトリックと思ったものは分かってしまうと思うので(○○トリックはいわば自明の理であり、それ以外のドラマを見るものと解するものだと思うけど)、タイトルを書くのは控えることとする。

*1:ヒースローとガトウィックはロンドン、シャルル・ド・ゴールとオルリーはパリの空港だが、これらを思い浮かべ始めた頃からターミナル間移動ではないと推測し始めていた

*2:ハミルトン市外にはロトロア湖というのがあるので、RotoroaをRotoruaと読み違えた可能性もある