クライストチャーチの建築覚え書き

大聖堂の船底型ヴォールト

先月、ニュージーランドクライストチャーチに出かけてきた。クライストチャーチは英国以外でもっとも英国らしい街と称されており、市民が花を愛好することからガーデンシティとも呼ばれている街である。季節は秋なので黄葉、紅葉が美しかったが、ススキの横で紫陽花が咲いていたことばかりは驚いた。
クライストチャーチに英国からの入植が始まったのが1850年ということなので、日本でいえば開国の頃だ。教会と大学はゴシック、オフィスは古典主義、商店はスパニッシュ、住宅は下見板張り、というように、用途と建築の持つイメージが結びついたクライストチャーチの建築は博覧会的な様相を呈していて(19世紀は古い建築様式のリバイバルがあった)、そういう点で開国によっていっぺんに西洋建築の文脈がなだれ込んだ日本と似ていて面白かった。
移民団の中に大工がいなかったために、船大工が建築に携わったという大聖堂は、天井のヴォールトの組み方が船底の形をしており、イレギュラーな作り方が日本の大工が自前の技術で作った擬洋風建築みたいだと思った。もちろん見た目のバランスはちゃんとゴシック建築であるが。

  • 以下、気になること&覚え書き (いつか気になることが解決するといいなあ、ということで)
  • 日本のスパニッシュ建築は、直接スペインからではなく、多くは大正末から昭和初期にアメリカのスパニッシュ建築から移入されたものだが、ニュージーランドの場合はどういう系譜を引いているのだろうか。
  • バスに乗っていたときに、窓から一瞬だけ見えた建物で、半球型の、お椀を伏せたような形状の建築物があった。住宅地にあったので、たぶん住宅なのだろうけど、南極基地の建物のようでもあり(カンタベリー博物館の南極コーナーに同じ形の建物があった)、再利用なのか、南極基地を模した住宅なのか、あるいは純然たるモダン建築なのだろうか。
  • 高原列車のトランツアルパイン号にスプリングフィールド駅から乗ったのだが、駅の側のドライブインのお店の入り口が引き戸で(Slideと手書きで注意書きが書いてあった)、ドア文化圏では珍しいので覚え書きとして書いておく。