納涼句抄

研究会日乗に、古典の下ネタ翻訳を載せると言いながら、暇がなかなかなくて、日乗そのものもご無沙汰になってしまいました。いまも野暮用に追いまくられていますが、たまには何か書きこまないと話にならないので、書中見舞がわりに、旧作の腰折れいくつか、お目にかけます。

(炎暑)
蘭鋳の荷をもろともに轢死かな
斧研いでわが名忘るる暑さかな
階段の無き家なりき姉の汗
待つ影の指のながさや夏木立
人這うて石段濡るる地蔵盆
あの蚊帳はいや踏切の夢をみる

(霧と月と北風)
どの声としりとりをせむ霧の海
影さすや沈める寺の月時計
山小屋に吹雪いてラヂオ盗まるる
雪原にはらわた紅き大太坊
湯豆腐やわが前世は蔵で果つ
百舌鳥鳴くや轢死の女まだ朽ちず