ピンポールカメラで横浜を撮る
先日、ピンホールカメラで横浜を撮影した。
ピンホールカメラといえば、以前、35ミリフィルムを使う紙製の「くま35」で撮影したことがある。このカメラは手頃な価格、かつ35ミリフィルムを使える(つまり現像、プリントを写真屋さんに頼める)という優れ物なのだが(おまけに熊の顔をしていてかわいい)、20年くらい前のレンズ付きフィルムのプリントのようなボヤッとした仕上がりで、その雰囲気を使いこなせないでいた。
今回はクッキー缶に穴を開けて印画紙をセットするという、いわば写真の原点に立ち返る方式での撮影である。思いもよらない構図で画像が出てくるのが面白い。手前の手すりは入れるつもりはなかったのに堂々と写り込んでいる。かなり広い範囲を撮れるので、横須賀の三笠ショッピングプラザ(とてもながーい建物なのである)を撮ってみたいなあ。それに小さな穴からの光で写真が撮れるという、素朴ながら魔法のような仕組みに感じいったり。
そういえば、子どもの頃に読んだ科学本に載っていたカメラ・オブスキュラの原理の解説で、木製雨戸の節穴からの光によって、壁に庭の景色が逆さまに映し出される例が紹介されており、それを確かめようと木製雨戸のある祖母の家で目を凝らした事を思い出した。当時から早起きが苦手だったので、雨戸の閉まっている早朝に目を覚ますのが大変だった。やっとのことで早起きをしたら、雨戸同士の間の隙間はあっても、小さな節穴はなかったので、その仕組みを確認することはできなかったのだが。
後年、同潤会の代官山アパートの解体に伴うお別れイベントの中で、アパートの一室を等身大のカメラ・オブスキュラにするという企画があったおかげで、その仕組みを確認できたときは、中途半端に済ませた夏休みの宿題を終わらせたような感慨があったような気がする。
というわけでピンホールカメラで撮影しただけで、いろいろ回顧をしてしまうが、写真は目の前の風景出来事を記録する役割とともに、再びあるいは何度も見ることで記憶を反芻する役割もあるので、カメラから過去を思い出すのも写真からの連想で、それと似たようなものだろう。