みみよる

石持浅海の新作『耳をふさいで夜を走る』を読んだ。

耳をふさいで夜を走る

耳をふさいで夜を走る

何というか、いろいろと興味深い問題作で、論じたいことは諸々あるのですが、取り急ぎ備忘録ということで。
覚醒すれば人類に災厄をもたらす魔族の種という展開(たとえば『オーメン』)は、SFやホラーの分野では枚挙に暇のないテーマながら、本書はやはり、実に石持風の脚色。ミステリ・ジャンルに限れば、城平京の『スパイラル』が設定的には一番近いだろうか(それとも『多重人格探偵サイコ』?)。ただし、『スパイラル』のブレード・チルドレンが最終的に、ある種、形而上学的な位置づけがなされるのに対して、本書のアルラウネはたいへん即物的に解釈されている(いささか無理筋な印象もあるのだが、それが石持の持ち味でもある)。
ちなみに、年下の美少女三名の庇護者が主人公というのは、ちょっと萌えアニメ風の設定である。で、その主人公が三人を殺そうと決意している。萌えアニメの鬱展開という意味では『School Days』を彷彿とさせる面あり。ただし、『School Days』が学園ハーレムもののパロディだとすれば、本書はたとえば、現在TV放映中の『絶対可憐チルドレン』をそのままダークサイドに反転させたような印象がある。そういえば、人類に対する潜在的脅威を予防的に駆除するという展開は、『美少女戦士セーラー・ムーン』の沈黙のメシアとも類似している。ああ、沈黙のメシアこと土萠ほたるは「萌え」の語源であるとの説もあったな。