ハンマースホイの館ミステリ?

休日出勤で都心に出かけたついでに、国立西洋美術館の「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展を覗いた。
室内風景をよくするその画風は、同時期に同じ上野で小屋掛けしているフェルメールを思わせる。購入した図録を見ても、やはりハンマースホイフェルメールの影響を受けているらしい。
もっとも、ストランゲーゼ30番地の自宅を舞台に、漆黒のドレスに身を包んだ妻イーダを延々と描き続けたハンマースホイの執着は、いささか鬼気迫っていて、そのあたりはフェルメールとはずいぶん違う。
素人目には厳密な遠近法に基づいているようでいて、どこか歪んだ構図。構図的に見えるはずなのに描かれていない椅子の脚。一見して写実的な画風の中に、そこはかとなく漂う夢幻の気配。同じ部屋をほとんど同じ構図で描いた絵画が並んでいるが、壁に掛けられた額縁が微妙に異なっている。二枚の絵の制作年代をチェックすると、実は何年も時を隔てているという、ちょっとした叙述トリック感覚。館ものが好きな方にはお勧めの展覧会である。
ハンマースホイの絵を眺めていて、フェルメールと並んで思い出したのが、フェルナン・クノップフクノップフの幻獣たちのように、あからさまに幻想的な画題ではないのだが、静謐なタッチの中から立ちのぼる神秘の薫香に何やら類縁性を感じるのだ。