1900 HOUSE

『2009本格ミステリベスト10』が発売になりました。

本格ミステリベスト10 2009

本格ミステリベスト10 2009

さて、DVD『1900 HOUSE』を見た。
『1900 HOUSE』(1999年英国チャンネル4製作)は英国の1900年のミドルクラスの生活を再現した番組である。再現生活に参加する家族は一般家庭からの公募で、応募時点ではどの家族もヴィクトリア時代の昔ながらの生活をすることへの憧れや意気込みを語っていて実に楽しそうだ。だが、実際、選ばれた家族は、最初に部屋に入ったときは歓声を上げたものの、何事も手間のかかる生活の中で、早々に音を上げてしまう。
同シリーズのエドワード時代版『マナーハウス』(2002年)asin:B000UYGC8Aでも、召使い役の参加者たちが相当苦労してリタイアした者もいたので、音を上げても仕方ないなあ、とこの辺は想定内。
画面はヴィクトリア時代の家を専門家の手によって再現するところから始まる。英国にはヴィクトリア時代の建物は多数残っているが、内部は生活に合わせて改築改装されており、それを1900年の時点に遡って修復するのである。壁や暖炉を覆っていた板や壁紙を剥がすと昔の石造りやタイルの層が現れ、現代の便利な生活への変化がまるで発掘現場の地層のようにたどることができて、なかなか見応えがある。
暖炉で燃す石炭のせいで、部屋の中にすぐに煤が積ってしまい、とにかくそれが、え、こんなに?というほどの量で、一日中掃除をしなくてはならないのが気の毒でならない。ミステリ小説だったら、この煤のせいで、触った場所や足跡が残ってしまったり、それを隠そうとして拭くと、そこだけがきれい過ぎてこれまた不自然で、という犯人としては面倒くさいことになるのだろうなあ。
暖炉に設置したオーブンがなかなか熱せず(ここの聞き取りがいまいちできていないのだが、どうもオーブンの具合が悪く、計画どおりの熱量が確保できていない模様)、うまく料理ができないため、夫人が癇癪を起こして泣いてしまう。そんなにめげなくてもいいのに、と思っていたら、コルセットの圧迫によってヒステリー状態になっていたのも影響していたらしい。
コルセットのせいで失神するとか、体型が歪んでしまうとか、知識としては知られていることをいちいち再現して見せてしまうのが(コルセットは体に悪いから省略をする、というような理性的なことはしない)、この番組の肝である。