マイクル・イネスと埴谷雄高
年末年始、『アララテのアプルビイ』と『証拠は語る』を読んだ勢いで、未読だったイネスの第一作『学長の死』も片付けてしまう。マイクル・イネスという人はある種の文学的閉所恐怖症で、クローズド・サークル=「潜水艦」的なものを忌み嫌っていたんじゃないか、と思った。
- 作者: マイクル・イネス,今本渉
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- 作者: マイケル・イネス,今井直子
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十八番の大学ミステリ『証拠は語る』は、『学長の死』のセルフ・リメイクっぽい書き方になっていて、『ズレイカ・ドブソン』やepigraphy、学内電話や秘密の結婚、等々のモチーフを意図的に再利用している感じ。この二冊を読んで、エドマンド・クリスピンのイネス・フリークぶりが痛いほどわかった。
イネス週間が明けてから、今はとある理由で、埴谷雄高『死霊』を読み始めたところですが(二十年前、三章まで読んだはずなのに、まったく内容を覚えていない)、頭がイネス漬けになっているせいか、埴谷の晦渋な文体とエキセントリックな登場人物も、イネスのペダンティックな奇人変人大会とほとんど同じに見える。